中学生に多い起立性調節障害①

先回書いた冬眠中?の友人も含め、次男が通う中間教室に通う生徒の中には「起立性調節障害」と診断をされている人がいます。
一般的には「不登校」の3~4割が起立性調節障害を併発していると推計されるそうです。(7割という資料もありました。)
起立性調節障害は、医学的には機能性身体疾患の一種として定義される病気です。
つまり、起立性調節障害による不登校状態は、単なる「怠け」や「不真面目」などとして片付けたり、根性論や精神論で解決しようとしておこったりするのは正しい対処法ではありません。
不登校について考えるにあたり、正しく理解しておくべきと考え、
今回、「起立性調節障害」を取り上げます。
中学生の「約10%」に起こる病気
「起立性障害」は 英語表記 Orthostatic Dysregulationから 「OD」と呼ばれます。
日本小児心身医学会の調査によると、中学生は全体の約10% (約350万人) の子どもが発症するといわれており、男女比では、女子が多いそうです。
起立性調節障害は思春期になりやすいとされており、季節によっても症状に変化があるそうですが、一般的な症状は
・朝起きられない
・立ちくらみが起こる
・食欲がわかない
・疲れやすい
・気分が乗らない
・全身が重たくだるい
・日常的に顔色が悪い
・失神発作が見られる
・動悸やめまいがする
・長い時間、立っていられない
・少し歩くだけで、息切れがする
・頭痛、片頭痛、頭重感が数日続く
・腹痛、下痢、腹部の不快感がある
・女性は生理不順が起きやすい
・夜は、なかなか寝つけない
・イライラすることが多い
・集中力が続かない
・乗り物に酔いやすい
何となく元気がない様子ですが、発熱はほとんど見られない。
症状は午前中に強く、午後には軽減する。
怠けているようにみえる
夕方から夜になると症状がラクになり、健康な子どもと同じように会話をしたり、ゲームをしたりして楽しむ様子が見られます。
「明日は学校へ行く」と言います。
ところが、また朝になると体調が優れず、学校を休みがちになる。
このような状況から、起立性調節障害の子どもは、家族や教師から「甘えている」、「怠けている」、「がんばりが足りない」、「さぼり病」などと思われることがあります。
学校に行きたくないのではありません。
病気のため、「行きたいけど行けない」状態だという理解が必要です。

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自律神経(交感神・副交感神経)のバランスが崩れる!
起立性調節障害は、思春期に起きやすい「自律神経失調症」の一種です。
自律神経とは、自分の意志とは無関係に体の機能を調整する器官です。
例えば、心臓を動かす、呼吸をする、食べ物を消化する、血圧の上げ下げ、など。
そして自律神経の働きは、
(1)昼間に体を活発に動かすための「交感神経」と
(2)夜に体を休めるための「副交感神経」
の2つに分担されています。
つまり、「昼間のONと夜のOFF」の調整をする自律神経のバランスが崩れた状態が自律神経失調症です。
思春期は、体の発育が急激なスピードで起こります。
そして、その急激な体の成長により、2つの自律神経の働きがバランスを崩す、と考えられています。
つまり、「交感神経」と「副交感神経」の連携がうまく働かず、 昼間のONと夜のOFF の切り替えがうまくいかない状態です。
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自分では「コントロール」しづらい
ODは、 昼間のONと夜のOFF の切り替えがうまくいかない状態なので、朝に働くべき機能が働かない状況で、午前中に体調が悪いのです。
しかし、自律神経は自分の意志とは無関係に働く機能であるため、自分ではうまくコントロールできにくいのです。
自分でもどうしようもなく、体がしんどい、苦しい症状に悩まされてしまうのです。
さらに、本人ががんばろうとしてもODの精神症状である、思考力・判断力・集中力の低下により、成績が急降下し極度の学力不振に陥ってしまうことは珍しくないそうです。
そして、
周囲の対応
自律神経の乱れは、立っていたり座っていたりすると症状が悪化します。
なので、本人はふとんやベッドで横になっていることが自然と多くなります。
周囲が注意すべき、と言われているのが
そのような状況をみて「怠けている」などの批判をすることです。
本人は「理解してもらえないこと」がとても辛いのです。
むしろ、そのような親や家族からのストレス(批判や否定の言葉など)が加わると、症状はさらに重くなると言われています。
一次障害と二次障害
ODと不登校の関係については、一次障害と二次障害があるようです。
【一次障害】立ちくらみ・めまい・ふらつき、全身倦怠感、起床・入眠困難による睡眠リズムの乱れなど、起立性調節障害自体により、日常生活のリズムが崩れてしまい、その結果として、遅刻・早退・欠席を繰り返すようになって、長期欠席・不登校に陥る。
【二次障害】ODによる体調不良が長期化していく中で抑うつ状態になったり、あるいは家族や教師の理解が得られず不信感がつのり、孤立感を深め、不登校に陥る。
このように、ODと不登校の関係については、一次障害と二次障害それぞれの場合で適切な対応が求められています。

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症状が3つ以上あれば早めに相談
起立性調節障害は、先に挙げた症状が3つ以上見られるときは、その疑いが高いと考えてよいとのこと。特に、
(1)朝なかなか起きない
(2)めまい、立ちくらみが起こる
(3)疲れやすく、疲れがなかなか抜けない
という様子が見られたら、要注意。
一度、医師に相談してみましょう。できれば、起立性調節障害について詳しい医師に、症状が見られる「午前中の受診」が最適です。
そして、起立性調節障害にはさらにタイプがあるそうです。
- 起立直後性低血圧
- 遷延性起立性低血圧
- 体位性頻脈症候群
- 神経調節性性失神
治療は、タイプと重症度で医師が決定するようですが、
生活のリズムを少しずつ取り戻すセルフケアと、血圧を上げる薬(昇圧剤)を服用する薬物療法が進められるでしょう。
家庭内では、「いい加減に早く起きなさい」「また怠けている」などと叱るのは控えたいものです。
必要な処方箋
しかし、診断されることが重要なのではありません。
診断され、昇圧剤などの服薬をすることでもありません。
自律神経のバランスを崩す原因が体の急激な成長変化だけでなく、むしろ、それ以上に心身に大きく影響する「ストレス」である場合はそのストレスの軽減が必要です。
いじめなどの「心理的ストレス」だけではありません。
休養・休日のないハードな部活などの「身体的ストレス」といったこともあるかもしれません。
今や社会的問題のネット依存による昼夜逆転かもしれません。
そしてネット依存にはリアルな生活での孤独感が関係しているかもしれません。
いつ治る?
起立性調節障害は思春期の場合、成人になるころには治癒するようですが、成人になってからも環境によっては再発するようです。
焦らずに確実に進めることが大事なようです。
ここまで、情報整理のために書きましたが、教科書的な列記になってしまいました。
もう少し、身近なこととして書きたいので、続けていきたいと思います。