「老人性うつ」は若い人の「うつ病」と違うの?

私の母は「老い」を自覚するようになってからとてもメンタルが不安定です。
「物忘れ外来」を受診し、認知症の進行というよりも「老人性うつ」と診断されました。
父や私もその診断に納得がいきますし、環境配慮に心がけています。
老人性うつの理解
「うつ病」若い世代の方がかかる病気というイメージがあるかもしれませんが、実際は小中学生など若い世代から男女問わず、幅広い世代でかかるリスクが高い病気です。
だから「老人性うつ」は65歳以上の高齢者がかかるうつ病のことをさしますが正式な病名ではありません。「うつ病」に含まれています。
つまり、「老人性うつ」も「うつ病」の症状と思われる、意欲の低下や思考力の低下、興味や喜びの喪失、抑うつ気分など、があり日常生活に支障をきたします。
日々生活していると苛立ちや落ち込みといった感情の起伏やストレスは、誰もが経験することですが、「うつ病」の場合はこうした症状が長く続き、日常生活に支障を来すという点がポイントです。具体的には、生きがいがない(自分の価値を感じない)、楽しみがない、漠然とした不安があるなど・・・。
ただし、高齢者では、典型的なうつ病の症状を示す人は1/3から1/4しかいないと言われ、症状の一部がとくに強く現れたり、逆に一部が弱くなったりしていることが多いので注意が必要といわれます。
多分、高齢者は長年の経験でカバーするのでしょう、「老人性うつ」の場合は気分や感情といった精神的な症状が見えにくく、頭痛や肩凝り、吐き気、不眠や過眠、食欲不振、めまい、極度の疲労感など、精神的な症状よりも身体の不調を強く訴えるケースも多いようです。
私の母も、身体の不調を訴えた上で、常に物事を悲観的に思い込んで話しています。
母を見ていて原因は「加齢」による喪失感が大きいと感じています。
年を重ね、若い頃とは違う身体の変化や環境の変化を受け入れがたく抗っている様子がありました。
例えば、高齢になればなるほど、治療が必要な病気が増え、病気が慢性化してくるし、それ以上に体力が低下したり疲れやすくなったり、記憶力が低下するなどの変化が伴うのは自然なことですよね。
でも、こうした身体の変化を感じるなかで、若い頃とのギャップに耐えられず落ち込んでしまうのかもしれないし、合わせて、母の場合、目の前にいる夫の身体的な衰えや認知の衰えに強く抵抗していました。
お父さんは昔はこんなんじゃなかった。
一方、父の場合、比較的「老い」を受け入れており、余計にそれが母を苛立たせているようです。
若い人に任せればいい。
若い人のいうことは聞くもんだ。
好きなようにさせればいい。
父は「老いては子に従え」のような振る舞いをしつつ、自分の親を認知症で介護した経験から筋力低下予防のためのウオーキングは続けています。
その暢気さが、「私がやらなければ・・・、でもできない」と母をさらに追い込むようです。
また、年々減る年賀状でわかるように、大事な友人などとの死別も多くなりました。別れのような大きな喪失感は、うつ病のきっかけになることもありますよね。
認知症と間違えやすい
ただ、この「老人性うつ」の症状はまさに「高齢者」ということで、認知症と勘違いされることが多いので注意が必要です。「老人性うつ」と「認知症」は違う病気です。
認知症は重症化すると、自分の認知機能が低下していることに対して無関心になります。しかし「老人性うつ」の場合は、自分の認知機能の低下についてしっかり自覚しているため、母は「今日約束していた会合への出席を忘れた。若いころはこんなことはなかった。」とそのことを強く気にしていました。
約束を忘れるなんて認知症だ・・・。
認知症は、「約束したこと」そのものを忘れています。
あなたは「約束を忘れた」ことを気にしているので認知症とは違います。
気にして自分を責めすぎてる。
うつ病の治療をしたほうがいい。
この受診のタイミングは、家族が悩むところだと思います。
「認知症」か「老人性うつ」かもしれないから「受診しよう」とは言いにくいですよね。
母の場合、認知機能低下への自覚があり、本人の希望で受診したのですが、それはよかったです。
母のように「老人性うつ」の場合、認知機能の低下が自分でもはっきりとわかるから、日常の多くの場面で頻繁に不安を感じるようになるでしょう。そしてその状態が続けば、どうしたらよいかわからずパニックになり、ますます精神的に不安定になるのだろうと想像がつきます。
受診のタイミングは早い方が、不安や苦痛を抱えた日常が減るのではないかと思います。
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さてどうする
「老人性うつ」と診断され、「認知症はまだ軽い」と言われている母。
診断名がついて落ち着くというのは一時ですね。
しばらくすると、そのことを前面に押し出して、周囲にいる父や私を攻撃しています。
私はうつ病だから…
もっと優しくしろ
言葉かけに注意しろ
「老人性うつ」の原因は「孤独感」と「喪失感」と言われますし、実際、母の場合もそうだと思います。
だから、できるだけ会話をしたり会いに行ったりするようにはしています。
でも、上記のようなことばかり言われ、こちらもけっこうしんどい・・・。
補聴器はいらない。
聞こえない方がいいこともある。
一般的には
若い人のうつ病を治すには「休む」ことが大切ですが、「老人性うつ」の場合は「活動する」「人と会ったり話したりする」ということが必要です。
だから、コロナ禍で多くの高齢者やその家族が悩んでいることでしょう。
その上、「老人性うつ」は加齢に伴う「喪失感」などを原因とするだけに、本人に受け入れてもらうことも必要な気がします。ここがかなり難しいと私は感じています。
ん~私も試行錯誤です。
できれば病気を発症しないよう予防に努めることが最優先といえるでしょう。
いつかは私も行く道です。
環境としての自分の振る舞いだけでなく、自分自身の将来への備え、という意味で今回記事にしてみました。