帯状疱疹が25年後に再発し、痛みで眠れない高齢の父
激痛に襲われ高齢者ほど辛い症状になるといわれる「帯状疱疹」。幼少期にかかった水疱瘡(水痘)のウイルスが体内に潜伏し続け、なんらかのきっかけにより数十年後に発症するやっかいな病気です。
つまり、幼少期に水痘にかかった人であれば、帯状疱疹は誰でも発症する可能性があり、80歳までに3人に1人が発症すると言われています。しかも、最初に書いた通り高齢になればなるほど症状も強くなるようです。
今回、87歳になった父が「帯状疱疹」を再発したのですが、幸い軽症で済ますことができました。
約25年前の60歳頃に発症した際にはつらい後遺症が残ってしまったのですが、その時と比べると今回は痛みの期間も症状も経過も雲泥の差。
高額のため「帯状疱疹ワクチン」を打っていなかった父ですが、今回、「帯状疱疹再発」を軽症で済ますことができたので、なぜできたのかを振り返りながら帯状疱疹体験談として書いておきます。
「高齢者の介護において注意すべき感染症の一つである帯状疱疹」への対応として、高齢者の介護をされている方のお役に立てれば幸いです。
【この記事でわかること】
高齢者の「帯状疱疹」再発を、軽症で済ますことができた一事例を通して、早期対応の重要性がわかります。
帯状疱疹(たいじょうほうしん)ってどんな病気?
帯状疱疹は、水痘(すいとう)・帯状疱疹ウィルスによって引き起こされる感染症です。
ただし、初めて水痘・帯状疱疹ウィルスに感染したときは、水痘(水ぼうそう)として発症します。
多くの場合、水痘は子どもの頃に発症し1週間程度で治りますが、治癒後もウィルスは体内の神経節に潜伏しています。その後、加齢やストレス、過労などが原因となってウィルスに対する免疫力が低下すると、神経節に潜伏していたウィルスが再活性化し、神経を伝わり皮膚に到達して、痛みを伴う赤い発疹を生じます。これが帯状疱疹です。
通常は生涯に一度しか発症しませんが、免疫が低下している場合には再発することもあります。
子どもの水ぼうそうワクチンは定期接種になっている
水ぼうそうは、5歳までに85%の人がかかり、多くの場合1週間程度で治ります。
ただし、子どもの頃に発症する水ぼうそうは、まれに重症化しますし、大人になって水ぼうそうを発症すると、脳炎、肺炎や肝炎などを併発することもあります。また、妊娠中に発症すると、胎児に影響が出る可能性があり、生まれた子どもに白内障や脳の萎縮などの合併症が現れることもあります。
そのため、水ぼうそうワクチンによって発症を防ぐように2014年10月1日から子どもの定期接種になりました。
我が家の息子たちは2003年、2005年生まれのため、当時はまだ水痘ワクチンは8,000円程度の自費でした。しかも、長男は0歳児で入園した保育園で水ぼうそうが流行っていたため、ワクチン接種前に感染してしまいました。
水ぼうそうの原因は、「水痘‐帯状疱疹ウィルス」というヘルペスウイルスです。
飛沫感染、接触感染、空気感染します。特に空気感染は、感染力が強く、同じ部屋にいるだけで感染してしまいます。ですから保育園のような場所ではあっという間に感染が広がります。
可能であれば、集団生活が始まる前にワクチン接種ができているといいですね。
次男が産まれた際は、1歳3ケ月で水ぼうそうワクチンを接種し、発症はしていません。
帯状疱疹と水ぼうそうの関係
繰り返しになりますが帯状疱疹と水ぼうそうは同じウイルスによって起こります。
小さい頃に水ぼうそうになり、かさぶたがとれて皮膚は治っても、水ぼうそうのウイルスはなくなりません。その後、体の中に数十年以上潜み、加齢や疲労、ストレスや病気などで免疫の働きが低下すると、ウイルスは神経に沿って体の表面に現れ、帯状疱疹を発症します。
帯状疱疹を予防するためには、水ぼうそうのウイルスにある程度触れて「ブースター効果」を得たほうがよいとは言われています。ブースター効果とは、体内で一度つくられた免疫が病原体(ウイルス・細菌など)に触れることで活性化することをいいます。
ところが、水ぼうそうワクチンの定期接種化により、水ぼうそうを発症する子どもは減少しており、それに伴い、普段の生活等でブースター効果を得る機会が減っているのかもしれません。
実際、次男である弟も水ぼうそうにならずブースター効果を得られなかったためか、我が家の長男ですが、15歳、中学三年の冬、高校入試直前に左脇に帯状疱疹を発症しました(汗)。
【医師】
この頃は、子どもといってもストレスがあるためか、10代の帯状疱疹も増えていますよ。
帯状疱疹は再発しないよね?いやいや・・・
帯状疱疹は、幼少期に水ぼうそうになった人は誰でも発症する可能性があります。神経節に潜んでいる水痘・帯状疱疹ウィルスは、免疫力が低下すると活動、増殖し帯状疱疹を発症するわけですが、治癒の過程でウィルスに対する免疫は一旦できますのですぐに再発することはないそうです。
しかし、長生きする高齢者も増えてきていて、一方高齢になると免疫力が落ちてきますから私の父のように人生において帯状疱疹を再発する人も一定数いるわけです。数字としては帯状疱疹の再発は5%以下と言われているので極端に怖がる必要はありませんが。。。。
帯状疱疹はうつる?
保育園で水ぼうそうが流行った際に、我が家の長男も水ぼうそうになったお話を書きましたが、長男にとっては人生で初めて「水痘‐帯状疱疹ウィルス」に接したからです。
ですから、仮に帯状疱疹を発症しウィルスが活動状態の父が、まだ水ぼうそうにかかったことがない人に接触した場合、ウィルス感染させて、「水ぼうそうを発症」させてしまう可能性はあります。
しかし、小さい頃水ぼうそうを経験している私が帯状疱疹の父と接しても、帯状疱疹をうつされて帯状疱疹を発症することはありません。
一方、仮に、水ぼうそうになっている赤ちゃんをもし私が抱っこしても、水ぼうそうや帯状疱疹を発症することもありません。むしろ免疫ブースター効果になるでしょう。
デイサービスの受け入れOKでした
高齢の父は、週2回、デイサービスで過ごしています。食事やレクレーションはもちろん入浴もしてきます。
今回、帯状疱疹になったためデイサービス利用について確認したところ、「利用はOK」でした。
ただし、入浴や活動の制限はデイサービスにいる看護師の判断にお任せしました。
つまり、上記にも書いた通り、帯状疱疹自体は「水ぼうそうにかかったことがない人」には感染の可能性はありますが、それ以外では感染させることはないというわけです。
実際に帯状疱疹から感染させてしまう可能性があるのは、皮疹との接触と言われています。
ですから赤い水ぶくれのプツプツやそれが破れたジグジクに触らないようにしておけば、感染はかなり防げるので、覆っておく必要があります。
帯状疱疹ができるということは、免疫力が低下するほど疲れている可能性もあるので、自宅療養ということも考えましたが、父の希望を優先してデイサービスは休むことなく行きました。
デイサービスには行きたい。
帯状疱疹ワクチン接種も考えよう
こんなことなら、早めに「帯状疱疹ワクチン」接種をしておけばよかった。
でも、まだ自己負担だし、お高いんですよね~
近所の美容師さんが先日2回目の接種を終えたと言っていましたが、自費で5万円弱かかったそうです。
・・・・う~~~ん、家族会議です。
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87歳父の帯状疱疹再発について
そもそも、私の父は今から25年以上前、60歳の頃に帯状疱疹を発症しました。
その時には、顔面、三叉神経域あたりに発症したため、入院して点滴等をしたようです。発疹は当初髪で隠すことができる場所のみだったため受診が遅れてしまいました。そして結果的に後遺症で難聴になってしまったようです。
なにしろそれは仕事自体は既に退職をしていたのですが、いろいろ忙しい時期で心労も多かったようです。当時、私自身も忙しく仕事をしており、帯状疱疹の状態は一度も見ることなく、後日談で知ったのですが、早期発見ができなかったのが悔やまれます。
散髪を嫌がるため帯状疱疹を疑う
さて、今回の経過です。
高齢の父の散髪は近所の床屋さんが店じまいしたこともあり、自宅で器用な姉がバリカンで整えています。
土曜日、姉が散髪の用意をしたところで父が頭の表面がピリピリして痛いから散髪したくないと言い出したそうです。
頭がピリピリ痛い。
頭の中ではなくて、表面が痛い。
痛くて、夜、眠れなかった。
心配した姉が私に電話をしてきました。
「見たところは何もないんだけど、ピリピリ痛いんだって・・・。」
その痛みの出方はきっと、帯状疱疹。
病院に行った方がいい。
もう土曜日のお昼を過ぎているから、行ける病院を探さないと・・・
できれば「皮膚科」、なければ内科。
週末の新聞に載っている当番医や皮膚科を検索・・・
幸い、診察時間中の皮膚科が見つかり、姉が病院まで父を連れていき、私は病院へ直行し、そこで交代する手はずを整えました。
発疹はないが抗ウィルス薬を懇願
待ち合わせた病院で父の様子を確認。
夕べから急にここら辺が痛くなって・・・
でも、頭痛って感じの中からの痛みではなくて、皮膚の表面だけが痛い。
ピリピリするからデイサービスのシャンプーが合わなかったかと思って水で洗っていたけど痛いし。
痛くて、寝てられないんだよ。
う~~~ん、まだ何も皮膚の変化はないか・・・・
でも、頭皮が痛いなんて・・・
かぶれか頭皮神経痛だよね・・・
見た目はニキビも何も無いし、狭い範囲だし、かぶれではないよね。
頭皮神経痛・・・??いやあ、今まで痛いことなかったし、そんな感じじゃないし。
やはり、帯状疱疹だよねぇ。(すべて独り言)
父の証言を信じると痛みが出始めてから医師に見せるまで、まだ19時間ほど。
一般的に発疹が出る数日前から体の片側にピリピリとした「痛み」やモゾモゾとした「違和感」が生じます。
まぁ、明らかにまだ発疹が出るほどの時間経過ではないようです。
そして、帯状疱疹は、発疹が生じて3日以内(72時間以内)に治療を開始するのがポイント。
発疹は治療しなくても2,3週間ほどで治りますが、治療が遅れたり治療しなかった場合には、「39度以上の熱」や「頭痛」をはじめ、全身的な症状が現れることがあります。また、治療が遅れると、発疹が消えたあとに、後遺症として神経痛(帯状疱疹後神経痛)が残る場合があるのです。前回の父の帯状疱疹がこれでした。
【皮膚科医師】
う~ん、症状を聞くと帯状疱疹のようだけど、まだ発疹が出ていないからなぁ。
まだ帯状疱疹とは言い切れないから、抗ウィルス薬をだすわけには・・・
はい。でも、明日は日曜日になってしまうし・・・
夜眠れなくてつらいし・・・
このつらい状況をあと2日我慢させるのは忍びなく・・・
年寄なので、帯状疱疹が重くなるのが心配で・・・
前回も三叉神経のあたりをやられて、難聴になってしまって・・・
お願いします。抗ウイルス薬を処方してください。
半泣き状態で医師に懇願し、抗ウィルス薬(バルトレックス)を処方してもらいました。
帰宅途中でさっそく1回分を内服。
たぶん、数日は神経に沿ってピリピリした痛みはあるとおもうけど。
もし今夜も痛みで眠れない場合は、整形外科でもらってある痛み止め(ロキソニン)を飲んで。
早期治療を受けるためには
すると、翌朝早くに父から電話。
いやぁ、もう痛くないよ。
えっ?そんなに効く?
直接見に行くと、昨日痛がっていたあたりがぼわーッと赤み(痣みたいな色)が広がっています。
発疹や水ぶくれはありませんが、直系8㎝くらいの楕円形の赤み。このあたりの神経域だとわかる。やはり帯状疱疹だ。
父に確かめたところ、全く痛みが無いわけではなく、少しピリピリする感じが時々あるけれど、昨日を「痛み10」としたら、今日は「痛み2以下」とのこと。
で、金曜日の夜から痛み始めたものの、結局、痛みと痣のような皮膚の赤みはは月曜日まであったのですが、水曜日には全く気にするものはありませんでした。
<簡単な時間経過>
痛み始め:金曜日20時ころ。右頭頂部がピリピリして眠れない。
19時間後:受診。見た目の変化なし。抗ウイルス薬内服1回目
1日半後:痛くないと父から電話あり
:確認すると、皮膚に直径8㎝程度の楕円状の赤みあり
2日半後:ちょっとピリピリする痛みは時々ある。
4日後:皮膚科再受診:頭皮の赤みはほぼ見えなくなっており、
発症2日後の写真を医師に見せ、やはり帯状疱疹だったねと確認。
痛みはないと言っている。
※抗ウイルス薬(バルトレックス)は処方通り、1週間飲み切り。
帯状疱疹は、できるだけ早く治療を開始することが大切と言われるけれど、発疹が出てからでないと抗ウイルス薬を処方されにくいと思います。
そのうえ、今回処方してもらったバルトレックスも含め、帯状疱疹用の抗ウィルス薬は市販されておらず、医師に処方してもらわなければ手に入らないのです。そのため、帯状疱疹が疑われる場合には皮膚科を受診する必要があります。
発疹が出ていない状況で抗ウィルス薬を処方してもらうのは難しいかな、とおもっていたのですが・・・
今回は、私の大げさな懇願や、父が高齢であること、そして父が以前に重い帯状疱疹を経験していたことが医師を動かしたのだと思います。
やはり早期治療は効果的
実際、長男の帯状疱疹の時は、発疹が出はじめて丸1日は経ってから受診しましたが、発疹が出る前も数日間痛い痛いと言っていましたし、内服が始まってからも発疹や範囲は広がってしまったし、かさぶたが取れ皮膚が治るのに2、3週間はかかりました。
幸い、後遺症はなかったのものの、痛い時間が長く、高校受験前にかわいそうなことをしました。
当時は、15歳の息子が「ピリピリ痛い」と言ってもすぐに受診するとか、帯状疱疹かも、という考えは思い浮かぶことなく、発疹が出てからやっと「もしかして帯状疱疹???」と思う一方で「いやぁ、15歳で帯状疱疹ってことはないでしょ。」とも思っていました。
また、前回60歳時の父の帯状疱疹は受診を後回しにしたために入院治療までして、後遺症も残しました。
我が家の情報だけですが結果的に、発疹が出ないうちに抗ウィルス薬を内服すると、痛みは数日で、そして発疹も出ることなく治るのに対して、発疹が出てから24時間たってからの治療では治癒までに2,3週間かかる。さらに72時間以上を過ぎてからの治療では入院治療が必要になり、後遺症も残りました。
今回、父が痛みのために眠れなかったのは一夜だけでしたし、「痛み」に支配される時間も2,3日間程度で済みました。帯状疱疹の早期治療開始はまさに高齢者の苦痛をなくし、日常生活への影響が少なく抑えられることを実感しました。
帯状疱疹の最初は皮膚の見た目に何の変化もない「ピリピリした痛み」や「違和感」のため、即時の受診行動にはなりませんが、これができたら、本当にその後の生活がラクに過ごせます。
ぜひぜひ、頭の片隅にこの情報をインプットしていただき、高齢者の帯状疱疹対応に生かしていただければと思います。皮膚科の医師もあえて高齢者の痛くつらい時間を長くしようなんて思っていないはずですから、お願いしてみるといいのではないかと思います。
介護者が「もしかしたら帯状疱疹かも」と思いついたり、早期受診したり医師や看護師へ相談したりする「対応力」が求められると思います。
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まとめ
幼少時に水ぼうそうにかかった人は誰でも「帯状疱疹」を発症する可能性があります。
初めに痛みが生じ、進行すると痛みは激しくなります。やがて、痛みが生じた体の左右どちらか片側に赤い発疹が生じて、進行すると発疹は帯状に広がり、やがて水疱になります。発症しやすいのは、胸、背中、腹部、顔、頭部です。
症状には個人差があり、患部に衣類が触れる程度の軽い刺激でも強い痛みを感じる場合や、痛みが強くて眠れないなど日常生活に大きな影響を与えることもあります。重症化すると運動神経にまで影響することがあり、腕が上がらなくなったり、難聴や顔面神経まひなどが起きる場合もあります。免疫の働きが低下することが発症のリスクを高めると考えられています。
特に高齢者は免疫力も落ちてくるため、帯状疱疹が発症しやすく重症化しやすい。また高齢者にとって帯状疱疹は、痛みによる睡眠不足や、活動制限など生活に大きな影響を与えます。
帯状疱疹は早期治療が必要であり、治療によって予後が大きく左右されます。特に、発疹が生じて3日以内(72時間以内)に治療を開始するのがポイントですが、早ければ早いほど治癒までの時間縮小や症状の軽減につながります。
高齢者が体の一部に「痛み」や「ひきつるような違和感」を訴えた場合、「発疹」が出ていない時点でも皮膚科医師や看護師へ相談してみることをお勧めします。
また、高齢者における帯状発疹の予防には、帯状発疹ワクチンの接種が効果的と言われているので、ご家族で検討させることも必要ですが、基本的には、健康的な生活習慣を優先しましょう。
帯状疱疹は高齢者以外には「50歳を過ぎた女性」に発症することが多いと言われたり、最近は20~40代の子育て世代での急増が問題になったりしているようです。そうです、我々世代こそ帯状疱疹ワクチンの接種が必要なのです。
今回高齢の父が処方された抗ウイルス薬(バルトレックス)は後期高齢者の負担で診察代と合わせ4000円程度でしたが、薬の種類によってはもっと高額になるそうですが、5年以上前の長男の時は1万円以上かかりました。
高齢者の帯状疱疹は早期治療が予後を左右するため、介護者の早期対応力が重要‼
余談ですが注意:冷やさないこと
神経痛の場合、冷やすとかえって痛くなることがあります。逆に「温めると気持ちよかった」などといわれることも多いです。帯状疱疹の痛みは神経痛ですから温めてあげるとよいでしょう。